ホームレスから父に成る!

ホームレスだった男の育児と日々の雑感

病に歪む 4  

私から口にした「終わり」


かみさんが別れの届を
役所から持ってくれば
私の愚かさを謝罪したのち、終わりにする気でいた。


かみさんが終わりを決断するなら
それは仕方がないことだ。


覆水盆に返らずとなろう。
私はかみさんの返事を待った。




2~3日が何事もなく過ぎた。


かみさんは
怒鳴るを見せず
家事をよくした。


私は胸の不快は続いたていたが
心は晴れていた。




吐き気がしトイレに入り
しばらくして出る。


すると洗濯機の上に
薄紫の和紙で作られた封筒に
和紙の便箋6枚からなる
かみさんの手紙があった。


B6サイズの便箋に
細かい字で15~16行が6枚ほど
びっしりと書かれてある。



私は無造作に開封する。


内容については
ここに特筆するものは無い。


文章の論点が定まらず
無駄に長いため引用しないが
おおよそ私への不満や愚痴のようなものだ。


私の体力が2割少ないこと
90歳の体力であること
先日に家事を手伝わなかったというような内容だ。


読むにつれ溜息が漏れたが
結びの段落では
この生活を続けたいとある。




私は便箋を封筒に入れ直し
和紙と和紙は擦れ合って入れにくいなど思いながら
玄関の棚にかみさんからの手紙を置いた。


夕食を終えた子らは
テレビで何某かを観ている。


かみさんはコタツでスマホをやっている。


私はかみさんにやおら近付き
かみさんにぐいぐいと尻を寄せて
膝の上に尻を落とす。


なんだなんだと慌てるかみさん。




「この半年以上の間、長く胸に不快感があったんだ。
 自分でも気づかないような緩い不快感だけど。


 先日の健康診断の結果を見てね。
 わかったんだ。


 怒鳴り声は確かに不快ではあるけど
 身体が病んで受け止めきれなくなっていたみたいなんだ。」


子らを見つめながら
私はゆっくりと切り出す。


かみさんは
膝の上に座る私の話を黙って聞いている。




「病の痛みや不安によって
 人格が変わってしまうことを以前に話したと思う。


 私自身がそれに陥っていたことに気付けなかった。
 すまなかった。


 病に魘された言葉だったとして
 許してほしいんだ。」


そこまで言うと
かみさんは涙しながら私の背中を掴んだ。




肉体や的な痛みや疲れ
精神的なストレスや窶れ


気付きにくい小さな疲れや
小さな不安も溜まり続ければ
形を歪めてしまう。




病めるときも
健やかなるときも


父親が考えるべきは、円満。


家族円満のために
自分に何ができるかを
もう1度、見つめ直したい。




病に歪めば、形を失う。


残りの命を
心して生こう。




子らと
かみさんのために



ありがとう。








病に歪む 3

夕食後


私は無調整豆乳を2杯やりながら
終わりにしようと告げると
かみさんは無言で目を赤く潤ませた。




就寝前


「おっとーとおっかーは
 これから離れて暮らすけど
 どっちと一緒に暮らしたいかい。」


私は4歳児に
残酷な質問をする。


4歳児はよくわからずも答える。
「やさしいから、おっかーがいい!」


3日怒鳴るをした影響か。
そうかとだけ返すと私は眠りについた。


「おっとーとおっかー、、なんではなれてくらすの?
 ぼく、、いっしょがいいよ、、」


4歳児のか弱い声が室内の暗闇に溶けた。






私は後悔していたが
胸に大きな不快感を持ったまま居たくなかった。


間違った選択をしていることはわかっていた。


しかし、身体の疲れと不快感は極まり
終わりにしたかった。




次の日からかみさんは
怒鳴ることもなく
食事を整え、掃除をし、子らの歯を磨いた。


やればできるのに
やらずしてスマホに興じていたのだと
私は幻滅した。




そうして
先日に受けた健康診断の結果が届く。




家族の終わりを宣言した次の日に
身体の変調の知らせが届いたのだ。


私ははっとした。



病(苦痛)が人格を歪ませる。



たしかに
かみさんの生活態度には悩まされていた。


しかして、それを受け止めきれなくなっていたのは
自身の体調のせいだった。


ゆるい肉体的な苦痛が
知らず知らず精神を狭量にしていた。


精神が弱っていた。


かみさんに謝らなければならない。
私が愚かだった。




それに気づいたとき
かみさんから手紙を渡された。







病に歪む 2

かみさんと同じ言葉を使い
語気を荒げて
子らを怒鳴りつけるを3日続けた。


「怒鳴る」が家庭にどう影響するか
かみさんに理解してほしかった。



「さっさとしろ!」
「メシ食え!」
「歯を磨け!」
「早く服を着ろ!」
「風呂に入れ!」
「はやくやれ!」



子らは消沈し、泣いた。
しかして私は怒鳴るを続けた。


かみさんは何も言わず
子らを慰める。


私は3日めに
かみさんを怒鳴りつける。



「さっさとしろよ!」
「優先順位を考えろ!」
「少しは考えろ!」
「考えてやってたら、なんで子の歯が溶けるんだよ!」



感情的に怒鳴りつけると
ぐうの音も出ず消沈するかみさん。




吐き気は大きくなり
気分は最悪だった。


「怒鳴る」をすることで
家族への情愛が薄れていくのがわかった。


スタンフォード監獄実験における
ルシファー効果を体現しているような気分だ。




「怒鳴る」ことで何が解決しようか。


子は怖いから「怒鳴る」に従うだけで
内面には面従腹背が起きてしまう。




気分が優れず
考えることが出来なかった。


愛とは「考える」ことが
私の持論だ。


もやもやとした不快感と吐き気
疲れ、だるさ、痛みなどから
考えることをしなかった。


「いまこの環境から去りたい」


怒鳴るを繰り返しているうちに
そう思うようになった。


そうしてかみさんからLINEが届いた。




かみさんからのLINEを読み終えた私は
終わりだと思った。


疲れた。


私は、彼女に疲れてしまった。




それが口をついて出た。