ホームレスから父に成る!

ホームレスだった男の育児と日々の雑感

かみさんの涙

6時、起床すると
すでにかみさんは起きていた。


0歳児が5時に目覚め
付き合わされて起きたようだ。


かみさんが回した洗濯機が止まり
私が洗濯物を干す。


2歳児はまだ夢の中だ。




6時30分
私は洗濯物を干し終えて
かみさんと0歳の娘の前に座る。


「昨晩は息子が、なぜ寝なかったか、理由を考えたかい?」


予期せぬ質問に
豆鉄砲でも食らったような表情のかみさん。


「、、〇〇ちゃん(息子の名前)はね
 お母さんに振り向いてもらいたかっただけなんだ。」


かみさんは目を丸くしている。




「昨晩、妹を寝かしつけてるとき、〇〇ちゃんが抱き着いていったでしょ
 あれは寝かしつけを邪魔しに行ったわけじゃあないんだ。


 昨日の夕方、昼寝から起きたら公園に遊びに行こうと
 (かみさんが)〇〇ちゃんと約束したね。


 そのとき帰宅した私に〇〇ちゃんが
 「おっとーもいっしょにいく?」と言ったのを覚えてるかい?」




黙って聞くかみさん。
私は静かに続ける。



「〇〇ちゃんは、公園で遊びたかったというより
 『お母さんと一緒に』遊びたかったんだ。
 だから「おっとーもいっしょにいく?」という表現になったんだよ。


 しかし公園に行ってすぐ17時になって冷えてきたため
 私が娘の帰宅を促して、おっかーが帰ってしまった。



 かみさんの帰り際
 私が〇〇ちゃんを抱っこしてたの覚えてるかい?


 あれは、おっかーが帰ってしまうのが寂しくて
 声を殺して泣いていたんだ。


 いつも娘の世話で自分と遊ぶ時間の無いおっかーと、
 公園で遊べるから


 、、楽しみだったんだ。」




子供は自分が親から愛されているかを考えるときがある。


私が子供の頃、親戚の4歳前後くらいの女の子が
「わたし、ほんとうの子じゃないんだ。よそからもらわれてきた子なんだ。」


思い詰めたような表情で
悩みを打ち明けるようにして私に話してくれた。


その子が生まれる前から、私はその親夫婦を知っていたため
とても可笑しかったが、そんなことはないよと励ましたことを覚えている。




「娘の寝つくのを邪魔しに行ったわけじゃなくて
 公園で遊べなかったから、母親との関わりがほしかっただけなんだ。


 、、毎日、娘が寝つくように子守唄を聴かせてあげてるでしょ。(生活の質的向上)
 でも〇〇ちゃんが寝るときは
 オムツを換えて、歯みがきして寝る、、(関わりが生活の作業)だけなんだよね。」




介護員時代に研修を受けたクオリティオブライフとは
このことなのだろうと思い出していた。




「だから母親との関わりが欲しくて
 ズボンを履くだけの小さな関わりでも
 時間を引き延ばそうとしてふざけるんだ。
 
 母親に自分を見てほしいからね。
 
 ふざけてなかなか履かないから
 母親は苛立ってしまうけどね。」




かみさんは声も出さず
大粒の涙を4枚目のティッシュで拭いた。




「、、家事と育児で大変なのはわかるけど
 食事の支度とか、皿洗いとか、無理してやらなくていい。
 
 そんなことは私がやるから
 子供が遊んでほしいときは、関わりを持つ時間を増やしてあげてほしい。
 
 母親と一緒にいるのに、寂しい思いをさせないであげてほしいんだ。」




時刻は7時を少し過ぎていた。


私は寝床でまどろんでいる息子の隣に横になり
息子が目を開けるのを待った。


息子は気配を感じ、私と視線を合わせる。
「おはよ!」
私が挨拶すると笑顔を返した。




昨日
息子と病院に行っていたかみさんが帰宅した。


「ちょっと公園に行ってくる。」
かみさんは言うなり荷物を置く。
息子は帰る最中にベビーカーで寝ているという。


寝てるならいいんじゃないかと私は止めた。
「病院で、公園で遊ぶって
 起こしてあげるって約束したから!」


そう言うとかみさんは17時だったが公園に向かった。



私は笑顔で頷き、
ジャガイモを茹で
キャベツを切り
手羽元にレモンをかけて
リンゴをすりおろしたものを加えてフライパンで炒め
夕食を整えた。




17時30分


息子とかみさんは
笑顔で手羽元を頬張った。


私は
この家族が好きだ。



ありがとう。